ボールペンの素材にこだわる人は、世の中の数%にも満たないのではないだろうか。
そんなことを思うこともあるが、素材にこだわる数%の人たちは、「チタン製のボールペン」という言葉にワクワクすると思う。
僕も、ワクワクする1人だ。チタン製の製品には信頼をおいていて、今のところそれを裏切ったものはない。
今回は、BIG IDEA DESIGNというアメリカの企業のチタン製ボールペン「Bolt Action Pen(ボルトアクションペン)」をレビューしていく。
単なる素材の優位性だけでない、100種類以上のリフィル(替え芯)を使用できるというロマンと実用性が詰まった製品だ。文房具が好きな人はぜひ最後まで読んで欲しい。
製品ページはこちらから。
(紹介する製品自体がAmazonになかったため、同社の別のペンを貼っておく)
「Bolt Action Pen」とはなんなのか
今回レビューしていくBolt Action Penは、「BIG IDEA DESIGN」という企業が作っているチタンでできたボールペンだ。
Kickstarterで目標を大幅に超える結果を出し、現在量産・販売に至っている。
名前にもついている「ボルトアクション」とは、銃で使われる弾丸の装填・排出を行う機構。
特徴的な、レバーをガチャンと動かす方式を真似てボールペンに採用したのがこの製品だ。故に「ボルトアクションペン」なのである。
最近では同じようなペンを作る企業も増えている。合理的な機構なので必然の流れだろう。
ちなみにこの製品を作っているBIG IDEA DESIGNは、この製品以外にも多くのチタン製品を作成している(時計や工具など)。
どれも素材の優位性を活かした、斬新なEDC(Everyday Carry)をテーマとした製品だ。いつも持ち歩く、かっこいいガジェットや工具を作っている。気になった人はぜひHPを確認してほしい。
チタンでできていると何がいいの?
この製品の大きな特徴の一つが「チタンでできている」ということだが、チタンの特性を知らなければ100%の良さは伝えられないかもしれない。
チタンについて簡単に箇条書きで紹介しておこう。
・軽い
・耐熱性が高い
・硬い(鉄の2倍・アルミの3倍程度)
・錆びにくい
・アレルギーがほとんど起きない
・加工しづらい
・高い
つまり、めっちゃめちゃいい素材だけど加工と価格に障壁があるという内容だ。
ちなみに僕自身はアレルギー体質なのだが、チタンの製品はかゆみも何も起きない。これはかなり嬉しいポイントだ。
さらに軽くて硬い素材というのは毎日持ち運ぶボールペンの特性にも適している。
錆びないのは雨の日でも安心。EDCには最高の素材といっても過言ではない。
つまり、チタンのボールペンはボールペンの中でも最高峰のスペックを持っていると言えるだろう。
開封と見た目
では、実際に製品を開封しながら外観を確認していく。
背面にはイラストと説明が記載されている。
会社のシールとコンパクトな宣伝が入っており、ブランディングがしっかりしている。
コレクションする人や、ペンをケースにしまいたい人にも喜ばれる梱包だ。
後述するが、この製品は生涯保証だ。その上でスペアパーツも用意されているというのは、長く使うことを想定しているのだろう。すぐにパーツを交換できるようにしてくれているのはとても嬉しい。
本体の素材・色にも複数種類があるが、今回購入したのは「Titanium DLC Black」だ。クリップ部分にはチタニウムの元素記号、Tiが入っている。
一方で、僕が愛用している真鍮製のSAKURA Craft_Lab 001(画像左)は34gとさらに重い。金属のボールペン同士で比較すると、チタンを使うことで大幅な軽量化ができていることがうかがえる。
ちなみに内部に入るリフィル(替え芯)はものにもよるが、2g程度だ。
この処理は車の駆動部分にも使われるような高度な処理で、相当な耐摩耗性がある。素晴らしい仕上げだ。
クリップ裏にはさりげなくBIG IDEA DESIGNのロゴが。さりげない主張がとてもセンスがいい。
外装はチタンだがボルトから見える内部の構造は真鍮でできている。黒と金のコントラストが映える。
最近ではUni Ball One F(ユニボールワンエフ)と言う製品が文房具界隈を賑わせているが、それに非常に近い。
One Fよりも重量があるため、より緊張感のある持ち味になるような印象を抱く。「しっかりした道具」が手の中にあることを感じる重みだ。
一般的なボールペンと比べると少し短いサイズ感だが、比較的手の大きい僕からしても全く問題ない。むしろ、不要な部分がなく安心感のあるサイズと重さにまとまっている。
ボールペン史上最高の自由度を持つ機能
このボールペンの最大の機能性は、100種類以上のリフィル(替え芯)を使用することができることだ。
一般的なボールペンと同じように、中央付近でひねると内部のリフィルが交換できる。
一般的なボールペンは全長が決まっており、決まったリフィルを入れることで決まった部分できっちりとつなぎ目が合うようにできている。
しかし、このBolt Action Penは全長が決まっていない。全長118mm~130mmととても幅を持たせた製品となっている。
そのため、100種類以上ものリフィルに対応ができるという作りだ。
長さの調節は非常に簡単。芯を出した(いわゆるノック式でいう、ノックした)状態で、ペン先が見えるちょうどいいところまでペン先(持ち手?)部分のパーツを回して止める、だけだ。
この時、ペン先のパーツは軸についているゴム素材のOリングが固定してくれる。外れることはない。
筆者は現在リフィルに前述したSAKURA Craft_Lab 001のブラウンブラックを使用している。
ジューシーな書き味と太めの勢いのある線がとても好みだ。
もちろん日本製のリフィルだが問題なく使用することができる。
手に入れるまでは大変
機能と外観から、とてもいい製品であるという紹介はできたのではないだろうか。
しかし、日本でこれを購入するためには海外のサイトで通販するしか手はない。
なぜならこの製品、日本に正式な代理店が存在しないからである。これが惜しいところ。
通常文房具であれば、一度触って、書いてみて、気にいるかどうかを吟味することができる。
それができないというのは一種の賭けだ。安い買い物ではない。少しばかり勇気がいる内容になる。
購入した後の到着は遅い。
この会社は通常配送の場合日本まで無料で配送してくれる。これはかなりありがたいのだが、e-Packetを使用している関係から到着まで7〜20日程度かかってしまう。
僕の場合は2週間ほどで到着した。
DHLを使用した配送にも対応しているが、3,000円程度の追加料金がかかる。早く欲しい人は、お金で解決することが可能だ。
手に入れるまでの障壁は試し書きと配送の2点だ。ここだけは気をつけておきたい。
素晴らしい機能と引き換えの惜しいところ
ベタ褒めする前に、実際に使ってみて感じた惜しい点を紹介しておきたい。
全て100点の製品など存在しない。参考にして欲しい。
1,リフィル対応の機構からどうしても起きるペン先の緩み
ペン先というにはあまりにも大きいが、先端の部分が緩んでくる。
特にペンを出すときは上記の画像のように持つが、このときに発生するねじれで若干の緩みは発生する。
緩みすぎて外れることはまずないが、几帳面な人は気になるかもしれない。
2,ボルトアクションが結構硬い
よく言うと重みがある。悪く言うと硬い。
数人にこのペンを自慢したが、みんなが口を揃えて「意外と結構硬いね」と言う。
個人的にはこの重みが結構好きなので問題ないが、みんなが想像するノック式ボールペンと同じ気持ちで使うと驚くだろう。
3,価格が結構高い
いわゆる「高級文具」のくくりに入る。
チタンを使用している以上どうしても金額はそれなりにする。執筆現在は一本12,500円。どうしようもないことだが、高い。
ちなみにBolt Action Penにはジルコニウム製のモデルもある。これはなんと3万円を超えてくる。高すぎる。流石に手が出ない。もし購入して無くしたら、半年以上は落ち込むと思う。
惜しいところを補って上回るほどの完成度
惜しいところを紹介したが、この製品は本当に素晴らしい製品だ。
触る機会が少ない製品だからこそ、伝えられたら嬉しい。
1,リフィルに囚われない気楽さ
これは機能の点でもすでに紹介しているが、この機能が「Bolt Action Pen」を最高のボールペンたらしめる理由の一つだ。
リフィルに囚われないと言うことは、全てのボールペンが替え芯として使える。インク切れは気にしなくても済むだろう。
書き味にこだわる人は、自分の気に入った書き味のリフィルだけを買えばその書き味を楽しむことができる。
重心やサイズ感、太さに文句がないならこの機能だけで購入する価値があると言える。
さらに、リフィルを変えても芯がぶれないことも大きな特徴だろう。
僕は先端がブレるボールペンが本当に苦手なのだが、このボールペンはその点でとても工夫されている。
ブレを心配しなくてもいいと言うのはとても大きなメリットだ。
2,メーカーによる永久保証
そこそこの金額に対して最高のパフォーマンス、それが永久保証だ。
もし補修部品が必要なときは部品を送ってくれるそうだ。もちろん、修理も対応してくれる。代わりの製品を送ってくれるとも記載がある。
日本の代理店がいないためやりとりはほぼ間違いなく英語になるだろうが、最近は翻訳ツールも多い。これは非常に高い評価ポイントだろう。
3,考え抜かれたデザイン
この製品のデザインは、最近見たどんな工業系のデザインよりも考え抜かれていると感じた。
これは実際に使ってみてさらに深く実感できる。ユーザーライクとはこのことだろう。
まず、芯を出すボルトアクションの機構は、ノック式によくある「気づいたらペン先が出ている」と言うことが一度もない。
ポケットに突っ込んだり、ごちゃごちゃとした筆箱の中に入れても問題ない。ノートに挟んで使ってもインクの跡が付くことはない。
次にクリップ。ペンの頭のギリギリまでクリップに挟むことができるため、ノートの上からボールペンの頭がほとんど出ない。
これは地味に嬉しい。ほとんどのボールペンは頭が出てしまって収納に困る。
このボールペンはポケットに入れるときも、全然飛び出さずに収まってくれる。使い手をよく考えた製品だ。
(ちなみに、ノートは山本紙工業のRO-BIKI NOTEだ。これも強くお勧めできる製品なので、載せておく。)
一生使うための信頼できるクオリティ
僕が今まで見たボールペンの中では、最高の製品だと言える。
見た目の好みを言ってしまえば、それは人それぞれで色々あるのだけれど。スペックやデザイン製を含めて、道具としての完成度が高すぎる。
チタン製であること。リフィルの自由度が高いこと。永久保証であること。
そして何より、触った瞬間にわかる道具としての質感の高さがある。
まさに毎日持ち運ぶ、一生使えるようなボールペンを探している人は、候補に加えるべき製品だ。
国内の店頭で触ることができないのが何よりも悔やまれるが、この記事を読んで「これ、いいだろうな」と思った人には絶対に合うだろう。
たかが文房具という人もいるだろうが、されど文房具。さまざまなアイディアを出すときに使う道具は信頼できるモノがおすすめだ。
これを機に、長く使えるかっこいい文房具を買ってみるのはいかがだろうか。