【作例多数】全カメラマンにおすすめする、オールドレンズ暮らし

愛すべき不自由の一つ。

被写体をキレ良く写すわけでもなく、逆光性能もない。
瞳AFにメーカーが力を入れている中、オートフォーカスでさえない。

そんなフィルム時代に生産された古いレンズに魅了される人々が現在、令和にもなって増えている(気がする)。
かくいう僕もその一人で、オールドレンズは僕の日常に溶け込んでいる。
今回はオールドレンズを使ってわかった魅力を作例挙げながら伝えたいと思う。


オールドレンズとの出会い

オールドレンズとは、文字通り古いレンズだ。

フィルムを使ったカメラが主流だった時代に作られたレンズで、70年代のレンズが多いような印象。

AFが無かったり状態が悪いものも多いが、明るい(F値の小さい)レンズを安価に手に入れることができる。

現行のカメラボディにも、マウントアダプターを噛ませることでつけることが可能だ。

そもそも僕はオールドレンズを知らなかった。カメラを始めた理由も「CGを作るリファレンスを貯める」という目的で、写真で作品を作る目的ではなかった。

しかし、カメラを実際に手にすると人は変わる。写真の作品に惹かれ、「僕もかっこいい写真撮りたい」と思うようになった。そこからはいいレンズを探したり、照明を買ったり、とにかく自分の手持ちの資金で機材を揃えて自分の思う「かっこいい写真」を撮るようになった。

そんな中、秋葉原で「2nd Base」というオールドレンズ専門店に立ち寄る機会があり、オールドレンズというものがあると初めて知った。

オールドレンズの写真は、僕が思う「技巧を凝らしたかっこいい写真」とは少し違っていたが、それはそれは独特の雰囲気がある素晴らしい写真に見えた。自己満足に例えるならヘヴィメタルとオルタナロックのような違いだ。

初回は購入するのに二の足を踏んだが、後になって欲しくなった。次に訪れた時は初めてのオールドレンズと、いつも使っているソニーα6600につけるためのEマウント用アダプターを購入していた。これが僕のオールドレンズとの記念すべき出会い。


魅力:淡さと脆さ

オールドレンズの魅力は、まずなんと言っても撮れる写真の素晴らしさだと思う。

解放付近で撮影した際のボケやゆるい解像感は、現代のレンズで表現が難しい淡さを感じる。
オールドレンズは特有の「ぐるぐるボケ」や、「バブルボケ」が出る場合も多い。
明るいF値は撮影する対象を際立たせ、緩くボケていく中に唯一無二の魅力があると言えるだろう。

F値を絞っていくと、解像感が良くなる。コーティングの劣化やクモリが色味に特有の変化をもたらし、ある程度鮮明ながらキレが緩い写真はノスタルジックな脆さがある。

オールドレンズは率直にいうと「かわいい写真」が撮れる。しかし、それだけでは語り尽くせないような魅力的な写真を撮ることもできる。

触る時間が長ければ長いほど、いろいろな一面を見せてくれる楽しさがある。撮る人によって感じ方や出来上がりが違うことも、オールドレンズで撮る写真の魅力だろう。


レンズの個性

オールドレンズは個性がある。同じレンズでも写りが違うことも多い。
今手元にあるレンズで同じものを撮って比較できるようにしてみた。このような個性を愛することができるなら、きっとオールドレンズが好きになるだろう。

被写体。こちらはSigma 24-70Artで撮影

1.KONICA HEXANON AR 50mm F1.4

2.Pentax Super Takumar 55mm F1.8

3.Canon 50mm/F1.8(Lマウント)

全て解放で撮影している。それぞれ同じような標準レンズだが、全く違う雰囲気であることがわかる。
これがとても愛おしいのだ。


不自由を愛するようになる

オールドレンズで撮れる写真は魅力的だが、どうしても古いレンズゆえの不自由さはある。
冒頭でも書いたようなAFがないこと、撮影モードに連動してくれないこと、手振れ補正がついていないこと、カビやクモリや凹みがある場合もある。

しかし、不思議なことに使っているとそういった不自由がかわいく思えてくるのだ。ピントが合っていない写真も愛おしく思える。
一つ一つの写真を撮るのに時間がかかっても、白飛びしていてもその良さがあると思える。
不完全さを愛することができたのは、オールドレンズのおかげかもしれない。

意外な便利さ

日常的に最も持ち歩いているレンズは、SIGMAの24-70mmのF2.8だ。しかしカフェにふらっといく時、散歩にいく時にはちょっと重すぎるし大口径で見た目も仰々しい。
そんな時にオールドレンズは小さい・かわいいといった最高のファッション適性を持っている。

「よし、撮影するぞ」という気合が入っていない日でも気軽に持ち歩けるのは、カメラを続ける上で最も大切なことかもしれない。

気軽に持ち出せて明るいレンズ、何気ない日常も非日常のように彩ってくれるという特性も持っている。

そんなオールドレンズは、実は全カメラマンが一つは持っておくべきアイテムだと思う。