去年ごろから構想していた「透明な造形の中に花を封入した作品」を作りたくて、個人的に最も身近なツールである3Dを活用して作品を作成した。
3Dと立体造形が身近になっている現代、役に立つ人がいれば嬉しいと思い、実際に作成するにあたってのワークフローを紹介していく。
参考になれば嬉しい。
流木を準備
今回は習作であることから手っ取り早く造形は自然のものから取り出すことにした。いい感じのサイズの流木を手に入れるために恵比寿まで足を運んで、選んだ末にそれっぽいものを購入。この時点でどこを透明にするのかは決めていなかった。
切断
持ち帰ったのちにスケッチである程度透明にする部分を検討。決めた後にノコギリで切断。このとき、切断したことにより刃の厚みである0.3mm分がなくなる。これは失敗だと思う。
使用したのは下記のノコギリ。ノコギリの中でも特にまっすぐ切断できるものを選定した。
3Dデータの取得・編集
切断後、透明にする部分を3Dスキャナーでスキャン。ある程度のスキャナーでなければプリント品が綺麗に接続できないことが予想される。
今回はEinScanシリーズを使用してスキャニングを行った。
スキャナーでスキャンした後にZbrushを仕様してブーリアンで内部をくりぬき。くりぬきには元データをリトポして単純化したものを使用。サイズを単純に縮小して若干の微調整を行った。かなり雑にくり抜いたが案外綺麗にくりぬきができた。
透明にできるか検証
作成したデータはデシメーションをかけて光造形の3DプリンターのForm3で出力。透明素材の3Dプリンターは数多いが、スキャンデータのエラーを自動修正してくれる機能が優秀な点からもForm3をお勧めする。
これによって「半透明状態の3Dプリント品」が完成。これの中に花を封入する・透明にすることが今回のメインの課題となる。
3Dプリント品が半透明な理由は二つ、「プリント品表面に積層跡があること」と「紫外線によって焼けて黄ばんだこと」だ。後者に関してはUVレジンを使用しているプリンターである以上正直どうしようもないため、前者をなんとかしてクリアしたいところ。
実際に積層跡を消して透明になるのか?という点を先にクリアしたかったため一度完全に水につけてプリント品自体の透明度を確認した。
かなり凹凸の激しい形状であるため完璧に見えるわけではないが、氷のような状態になることが判明。細かい凹凸を消すことである程度の成果が得られるという希望を持つことができた。
積層跡を消すための方法は、研磨してツルツルにするか表面をコーティングするかの二択だ。僕自身めんどくさがりであるという前提の上で、形状が複雑で研磨が難しいこと・形状にそこまでの精度が必要なかったことから、今回は研磨なしでの透明化を目指す。
花の封入
画像は残っていないが、エポキシレジンを使用して内部に花を封入。
今回使用したレジンは特に透明度にフォーカスしている下記製品。レジン自体の透明度はさすがのもの。
表面の凹凸を消す
3Dプリント品を透明にするためには、表面に透明素材の液体で塗装するのがベストだ。
今回は透明ラッカーを使用した。三度塗りほど行ってこの程度の透明度となった。
エポキシレジンを使用してもよかったが、粘度が低くさらさらしているためかなり難しい。
ハケで塗るのも一つの手だと思う。
固まるまでの時間を考慮して、UVレジンを使用するのもいいかもしれない。次の作品で試してみようと思う。
切断した元の流木、3Dプリントしたままのもの、封入・加工したものを並べてみた。かなり透明に近くなっていることがわかる。
接着・台座付け・完成
接着には手芸店で購入した透明ボンドを使用。
台座用の穴をドリルで空け、芯棒をつけて完成。
表面には最終的に艶出しのためにエポキシレジンを塗っている。
そもそも樹木自体の表面の凹凸で内部がかなり見えづらいという問題がある。
完全な透明に近くするためには、外表面は単純な形状でないといけない。
かなり雑に書き殴ってしまったが、参考になる人がいれば嬉しい。
今後3Dスキャン、3Dプリントは今後の作品作りに大きく関わってくると思う。新しい発見があれば同じように記事を書いていきたい。